通信関係の営業をしている者です。
先日、アポイントを取るため、取引先の社長に電話をかけたところ、「ま、考えとくわ」と言われました。
1週間後、また電話をし、「いかがですか」と尋ねたところ、「考えとくって言ったやろ、分からんのか!」と、ものすごい剣幕で怒られてしまいました。
私には分かりませんでした。「考えておく」と言われれば、期待してしまいます。
謝りましたが、なんとなく、しっくりきません・・・。
(34歳男性・営業職)

 
ミタ : 関西がらみで、もう一通いただいてますので、今回はこちらの話題で行きましょう。
マセ : はい。まず、この「考えとく」とか「検討させていただきます」は、断り文句ですね、基本的には。

ミタ : 「考えとくわ」は、関西方面で多く使われる表現ですね。はっきり断られるというよりは、言われた側が忖度(そんたく)して、「断られたと判断しましょう」ということのようです。

「考えとくわ」には、深い意味が

マセ : うん。でも僕は、「考えとくわ」って言われたら、「じゃあ考えてくれたんでしょ」って、行きますよ。
ミタ : あえて行くんですか。

マセ : 関西人だもん。「いや社長、こないだ『考えとくわ』言うとったじゃないですかー」って。
ミタ : えーと、洒落を乗せて行く、という解釈でよろしいですか。
マセ : うん。洒落に洒落を突っ込んでいくの。そりゃそうですよ。

関西では、「考えとくわ」言うたら、「お前、それでどうするつもり?」みたいなニュアンスがあるわけです。
基本は断り文句なんだけど、「それでおしまい? それともまた来るか?」って。

ミタ : えっ。断りながらも、そんな優しさがまだ残ってるんですか。
マセ : そう。それが「考えとくわ」や。
ミタ : 関西人じゃないと、それは分かりませんよ・・・。

関西人の一般的なやり取り

マセ : だから、「考えとくわ」言われたら、バーッと行く。
お客さんに怒られて、「お前、何考えとんや。顔あらって出直してこい!」言われるやん。
言われたら、普通はすごすごと帰る。

じゃなくて、そこで「わかりましたー!」って、近くのトイレでも行って。本当に顔あらって、また行くの。
「顔あらって出直してきましたー!」って。

ミタ : びしゃびしゃで行くんですか。
マセ : いや、なんでやねん。ちゃんと拭いてけばええよ。
ミタ : そこは笑いを取るわけじゃないんですね。
マセ : まあ、ちょっとぐらい拭き残しがあってもええわ。

「なんやお前、さっき帰れゆーたやろ」
「いや、顔あらって出直してこい言うから、顔あらって出直してきましたー!」
「しつこいやっちゃなあ。何やりたいねん、言うてみい」
ってなるの。

ミタ : それで聞いてもらえるんですか。じゃあ、この方はどうしたら良かったんでしょう。
マセ : 「考えとくわ」言われたら、「考えたでしょ、どうでっか」って。
ミタ : でも、怒られちゃったみたいです。

マセ : 「お前、考えとくわ言うたの、断り文句や。分かれへんのか」
「いやあ、全然。ものすっっごい真面目に、『考えとく』おっしゃったじゃないですかー」
「いやいやいや、そんなことない」
「私はそういう風にとらえました。考えたでしょ、だって、こんなええ話ないですよ社長。
だから、『考えとくわ』でしょ。それ断ります? ええーっ、うそでしょー? こっちがビックリですわ」

ミタ : すいません、面白すぎるんですが。
マセ : えっ、普通、そうよ?

ミタ : でもそれって、「関西 vs 関西」だから成立するのであって、他の地域の人間からしたら、ショボーンとするしかないですよ。
マセ : それは今回のこれを読んで、勉強してください。関西人と戦うときは、こういうノリなんやと。
ミタ : もう、関西人とは戦える気がしません・・・。

「考えとくわ」、利用しましょう

マセ : まずね、「考えとくわ」に行くまでが大変なんですよ、本当は。

電話とか訪問とか、何らかの形でアポイントが取れて、会ってくれた。話を聞いてくれた。
そしたら、「何ができんの、ワシにどんなメリットがあんの、儲かるのそれは」言われるわけ。
その時に、ちゃんとプレゼンテーションできるかどうかが重要なんです。

大概の社長は、1回は会ってくれるからね。その時のプレゼンが悪ければ、「考えとくわ」になる。

2回目会ってもらえたら、同じことをやったらアカンので、バシッと決めないといけない。
その時に、相手さんがどのくらい儲かるぞ、ってのを作っておかないとね。

できなければ、「何しにきたん?」と。「ワシの時間、1時間もつこうてこんな話か」と。
「どんだけワシ損したか分かるか」と、言われるだけやねん。そりゃあ、「時は金なり」よ。

ほんまに言われるからね。関西は特に。
「そんな話のために、俺の時間つこたんか。あ~、もったいな。もうええわ、帰れ帰れ」って。

「考えとくわ」って言ってくれた。そりゃあ、それを利用しない手はないですよ。
「考えといてくれるんや、ラッキー」って思って、あとはもう、グイグイ行くんやけど、言い方は作戦を練らんとね。

ミタ : そうですね。
マセ : ごくちっちゃい針の穴をあけて、真っ暗なところに一条の光が見えてきた。そこを突き破るか突き破らないかはもう、本人次第です。

社長さんと会話、楽しいですよ

ミタ : 難しいですね。変なこと言えば怒られちゃいますし。
マセ : 下手(したて)に出るから、相手が上から目線になるんですよ。

営業は、相手さんがあるから、どうしても基本、下手になってしまう。
だけどあんまり下手になると、相手が上から目線になるから。その辺はうまく考えないとね。

上から来られたら、相手のプライドを傷つけないように、でも「それ変じゃないですか?」みたいな、切り返しをする。

ミタ : 相手は社長ですが、勇気いりませんか。
マセ : 社長に「考えとく」って言われたら、楽勝ですよ。

「社長考えていただけましたか」
「いらん」
「何言ってんですか、それじゃあ考えたことにならないですよ。何を考えていただいたんですか。ちゃんと教えてください。じゃないと、僕、会社に帰れないですよ。
一言、言ってくださいよ。一言、二言、いや三言くらい言っていただけます?」
って。

ミタ : 面白いです。
マセ : そうすると、「変なヤツだな」って思ってくれてね。社長は大概、変なヤツ好きなんですよ。
中小企業の社長は、右向け右の人間ばっかり周りにいるから、時々変なヤツが来ると、面白がってくれるんだよね。

ただ忙しくない時に行くのが基本ですよ。明らかに忙しい時にそんなことやったって、邪魔なだけ。逆上されておしまいだよね。ヒマそうだな、と思ったら突っ込む。
ゴルフのパターの練習してた、みたいな時がいいですね。仕事の真っ最中で、バタバタの時に飛び込んじゃったら、それは察しないと。

堂々と、やってみてください

マセ : いずれにしても、せっかく会うチャンスがあった、向こうは聞いてくれる態勢なんです。
どんだけふてぶてしく、うっとおしそうにしてても、聞いてくれてんの。
それは、おいしいとこ、ちゃんと見せなあかん。

おいしいとこは、先に見せた方がええねん。ガーッと行って、パッと見せて、「ほれほれ」って。
それがおいしそうに見えたら、「儲かんの、これ?」。

「儲かりますよ。何いってんですか社長、分かるでしょ、これ。えっ、分からない。あ、そうですか。もう一回説明しますか」
「なめとんかお前は」
まあ、そんな会話や。

そんなんですよ。「堂々と、ぬけぬけと」ね。
ミタ : 「堂々と、ぬけぬけと」。なるほど。
マセ : なかなか、やれるようで、でけませんけども。

ミタ : 場数が必要ですか。
マセ : 場数は、2回か3回もやればできます。

ただ残念だけど永久にできない人もいますよ。向き不向きもあるからね。
もしできなくても、その仕事が向いてないだけで、他の仕事では可能性があるから。そっちでチャレンジすればいいんです。

ミタ : そうですね。
マセ : ということで、どないなもんでっしゃろ。

(2017年3月収録)

【今回のあなたに贈る1曲】
『プレイバックPart2』 山口百恵 (1978年)
バカにしないでよ、そっちのせいよ
少しは気が晴れますように。