良い決算、悪い決算
学生のころ、電気工学を勉強していました(・・・いたはずです)。
毎週2回実験をして、そのレポートを1週間以内に提出しないと、単位をもらえません。
ですから、ほかの科目は休んでも、実験だけは絶対に休めません。
どんな実験をやったのか、もうすっかり忘れてしまいましたが、電気科の実験はやたら数字との戦いをします。
データを取り、電卓をたたき、表を作り、グラフを作り、その数字の意味するところを考察するのです。
将来エンジニアになるための基礎訓練です。
私は数字との戦いは決して嫌いではなかったのですが、エンジニアはさっさとやめて、営業マンになりました。
その後、転職し、マーケティングをするようになると、この「数字との戦い訓練」が生きてきます。
マーケティングや営業をしている人のほとんどは文科系で、理科系ではありません。
ですから「こんな簡単なことが分からないのか…?」という場面にしばしば遭遇しました。
まあ、私も理科系の落ちこぼれですから、エラそうなことは言えませんが。
こうしてマーケティング的な数字を見ることがなんら苦痛ではない私にとって、予算づくりや実績の分析はとても楽しい仕事でした。
そして、自分の予想通りの結果になると、とても充実感に浸れるのです。
コンサルタントの仕事をしていると、決算書の数字を見ることがメインになってきます。
連続決算書を作ると、異常値が良く見えるようになります。
時々「なにこれ?」という妙な数字が見えてきます。
その会社の経営者に尋ねると、たいてい粉飾数字です。
粉飾にも簡単なものから手の込んだものまであり、決算書だけではなかなか見抜けないものもあります。
ですが、一般的な中小企業は、概ね初級ばかりですので、それほど苦労はありません。
我々は税務署ではないので、粉飾を見つけたからどう、ということはないのですが、なぜその必要性があったのか、そのまま放っておくと何が起こるか、を確認したり説明したりします。
粉飾には2種類あります。
赤字を黒字にするものと、黒字を赤字にするもの。
どちらもダメです。
前者はどこかで破綻します。後者は脱税になる。
結論から言えば、粉飾数字による決算は誰も望みません。
銀行対策でかっこよくしたいという社長さんもいますが、全くの考え違いです。
正しい決算をして、その決算の理由をきちんと報告説明する方が、金融機関からの信頼は確実に上がります。
たとえ赤字であっても。