レナウンの倒産から経営実務を学ぶ(1)新型コロナがアパレル業界のサイクルを乱す
アパレルの雄「レナウンの倒産」
5月15日、大手アパレルメーカー、レナウンの倒産が報じられました。
レナウンと言えば、「ダーバン」「アーノルド・パーマー」「HIROKO・KOSHINO」など多くのブランドを持つアパレル業界の雄です。しかも上場会社です。
30年前はアパレル業界では断トツでした。
50歳以上なら、「♪レナウン娘に春がくりゃ…」というCMソングを口ずさめる方も多いでしょう。
デパートの休業も要因、しかしその背景は…
近年はブランド信仰が減り、ネット販売も増え、デパートでの展開が多いレナウンには逆風が吹いていました。
そこに今回の新型コロナウイルスで、デパートが休業となり、販売不振で民事再生法適用の申請ということになりました。
レナウンにとって、デパートの休業がトドメになったことは間違いありません。
しかし、実はアパレル業界の背景はもう少し複雑です。
中国の生産が止まり、日本のアパレルは悪循環へ
ご存知のように、アパレルの生産はほとんど中国で行われています。
中国で新型コロナが流行りだした1月ごろは、春夏物(はるなつもの)の生産と出荷の最盛期です。
しかしこの時期、中国では大都市のロックダウンや移動制限が始まり、海外渡航も制限されました。
その結果、中国国内の製造業はほとんど生産停止状態となりました。
当然、2月~3月にかけて日本に入荷するはずの春物商品はほとんど入ってきませんでした。
本来、アパレル会社はこれらの商品をデパートに納品して売上が立ちます。
しかし、納品する商品がないのですから、
売上が立たない ⇒売上代金が入金しない ⇒資金繰りが苦しくなる
という悪循環が始まったのです。
夏物や秋物も充分に手配できていない
その後、中国は制限を緩和し、現在では製造業もかなり動いています。
そして春が終わった今ごろに春物商品が届く、という皮肉な状態が起こっています。
まずいことに、3月~4月は夏物や秋物の生産手配の時期ですが、日本の担当者が現地訪問できませんでした。
そのため、充分な商品が発注できていない状況にあります。
こうなると、6月以降にデパートが再開しても、夏物商品が満足に並ばないということになってしまいます。
アパレル業界の立ち直りは、秋冬物のシーズンまでかかりそうです。
レナウンの今後は?
とはいえ、レナウンはまだまだ魅力的なブランドを多く持っています。
実はレナウンは既に中国資本の傘下に入っています。
そして今般、「民事再生法適用」ということです。
参考:「民事再生手続開始等に関するお知らせ」株式会社レナウン(PDFファイル)
https://www.renown.com/ir/release/2020/l2h587000000573c-att/pdf_ir200515.pdf
スポンサーがつき再生を図る
「民事再生法適用」というと、倒産のレッテルが貼られてしまうのですが、実は再生を目指す方法です。
民事再生には、必ずスポンサー企業が必要です。
つまり余計な負債(借入金や買掛金の未払いなど)をカットし、一定の資本を注入すれば立ち直れる場合に適用されるのです。
この一定の資本注入をするのが、スポンサー企業です。
上記レナウンの「民事再生手続開始等…」には、「スポンサーの探索」と記載されています。
おそらく水面下ではスポンサー企業のメドはついていると思われますが、正確なことは不明です。
次回に続きます。
→レナウンの倒産から経営実務を学ぶ(2)アパレル業界とデパートの関係性とは