創業事業部門を売却する、パイオニア
かつて「オーディオブーム」がありました。
ブームの始まりは「セパレートステレオ」。
それまでは一体型のステレオが主流でしたが、これはセンターにレコードプレーヤー、チューナー、アンプ部分をまとめ、左右にスピーカーを別にしたタイプのものです。
(写真はパイオニア製セパレートステレオ)
高度成長期の真っただ中。
人々は家に帰って音楽を楽しむという時間を持つようになった時代でした。
セパレートタイプは高級感があり、狭い家にど~んと鎮座しました。
わが家にもありました。ところがレコードが高くて、数枚しかない。同じレコードをしょっちゅう聞いていました。
4チャンネルステレオ、なんてのも出てきました。いま風に言うならサラウンド。
これはあまりヒットしなかった。コンテンツ(4ch対応のレコード)が少なかったこともあります。
次のヒットが「システムコンポ」。通称 “シスコン”。
アンプ、チューナー、レコードプレーヤーも別々にし、センターラックにこれらを入れるタイプで、メチャクチャカッコいい。
(写真はシステムコンポPROJECT7)
その頃からオーディオマニアが増え、より高級なものを求め“バラコン”(コンポをバラバラに集める)が増えます。
アンプは山水、チューナーはトリオ(現ケンウッド)、プレーヤーはパイオニア、スピーカーはダイアトーン(三菱電機)なんて感じです。
さらにオープンデッキやカセットデッキ、CDプレーヤーが増えます。
私も学生時代はムリして集めました。元来、音楽が好きですから、その再生道具であるオーディオには当然興味があります。
この頃がオーディオブームの最盛期でしょう。
その後、シスコンはデカすぎて衰退、代わりにミニコンポが売れます。
私がパイオニアに転職したのは、この頃のこと。
そしていよいよレーザーディスクが登場します。
ワーナーパイオニアの中森明菜が全盛期。プライベートシリーズの広告に起用し、商品は爆発的ヒット。
そしてレーザーカラオケが出始めます。これがまた売れに売れた。
しかしこれがアダとなります。長期低落の始まりです。
通信カラオケが出現したときにパイオニアは出遅れ、圧倒的にあったシェアがあっという間になくなってしまいます。
またインターネット時代となり、オーディオ機器は無用の長物となっていきました。
プラズマディスプレイでつまずいたことも大きな要因です。
そして平成26年5月15日の日経新聞によれば、AV事業を売却するとのこと。
かつて「ステレオのパイオニア」と言われた音響機器事業がなくなるとは。
しかし企業は時代の変化に適合し続けなければなりません。
次のパイオニアに期待しましょう。